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家族関係の大掃除

2016年12月27日
毎日生活していると、使用済みの物も、ゴミも、ホコリも、だんだんと溜まっていきます。
小まめに片づけ、掃除していればよいのですが、余裕がないと、ついほったらかしにして、溜まったものが積み重なっていきます。
すると整理がますます面倒になり、放置します。
家が、どう手を付けてよいかわからないモノで占拠され、生活スペースが少しずつ狭くなり、不便な生活を強いられます。
気がつかないうちに、生活がうまく機能しなくなります。
そういう時は、意を決して家の大掃除をしなければなりません。

心の中も同様です。
ふだん生活していると、どう処理していいかわからない気持ちが溜まってきます。
棚上げして放置していると、だんだんと心のスペースが狭くなり、心がうまく機能しなくなります。

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花子さん(仮名)の息子は、ひきこもっています。
母親から、いろいろ働きかけても、一向に動き出そうとしません。

花子さんは、父親からも声をかけてもらいたいと密かに思っているのですが、夫の一郎さんは子どものことに関心がないようです。
息子のことについて、夫婦でひざを交えて相談したいと思うし、そうしなければならないとアタマではわかるのですが、花子さんはどうしても一郎さんと向き合い、深い気持ちで話し合うことが出来ません。

夫婦の間には、長い間放置されたホコリがこびりついており、それを掃除できませんでした。
しかし、カウンセリングによって、家族関係の大掃除をして、息子がひきこもりから回復しました。

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初回のカウンセリングには、母親の花子さんが、おひとりでいらっしゃいました。
はじめは息子くんの相談だったのですが、だんだんと夫婦関係のお話に発展していきました。

実は、一郎さんは10年ほど前に会社の女性と浮気をしました。
お金をつぎ込み、家計も破たんし、離婚調停まで行きましたが、結局は離婚しませんでした。
やがて、一郎さんは浮気に終止符を打ち、妻の花子さんの元に戻ってきました。

今は、落ち着きを取り戻し、ごく普通の家族生活です。
しかし、あれ以来、花子さんは一郎さんの不倫を誰にも語ったことがありません。
夫婦でも、その話題は避けてきました。
花子さんは、未だに一郎さんに対する心のわだかまりを抱えています。それはどうしようもなく、あえてそのことに触れなくても日常は平穏に過ぎます。
この10年間、花子さんのわだかまりの気持ちは棚上げして触れないようにしてきました。

息子のひきこもりが始まり、両親が協力して息子のことを相談するべきということは、頭ではよくわかっています。しかし、花子さんは気持ち的に、どうしても一郎さんと向き合い、素直な気持ちになりません。今回、花子さんが相談にやってきたことは一郎さんには話しておらず、今後、一郎さんに来てもらうことは仕事が忙しいので無理とのことです。

男の子が自立を達成するとき、父親の役割はとても大切です。
私は、次回、父親にもカウンセリングに来てもらおうかと、内心考えていたのですが、花子さんのお話を聞いて、どうもそれはとても無理そうだと考えました。
父親の協力はあえて求めず、母親と本人のカウンセリングを進めていくしかないと考えました。

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ところが驚いたことに、2回目のカウンセリングに、ご両親が揃ってやってきました。
あれっ、花子さんは一郎さんと一緒には来たくないのではと内心思ったのですが、どうしたことでしょう?

花子さんは、1回目のカウンセリングの後、初めて息子のことを一郎さんに相談することができました。一郎さんも、息子のことはどうにかしないとと思っていました。土曜日の午後に仕事の都合をつけ、夫婦揃ってカウンセリングにやってきました。

花子さんのお話を伺った私は、一郎さんは浮気をしたくらいだから、家庭を顧みない男性なのかなと想像していたのですが、実際にお話ししてみるとそんなことはありません。家族思いで、昼間も息子のひきこもりのことを考え、仕事が手につかないんだと語りました。

それを聞いた花子さんはびっくりしました。
夫は、仕事ばかりで、家族のことなんかちっとも頭にないと思っていたのに、全くそうではなかったのです。花子さんは一郎さんをカウンセリングに連れてきて良かったと思いました。

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3回目のカウンセリングでは、それまで拒否していた息子さん本人も一緒に、両親と3人がやってきました。2回目のカウンセリングの後、一郎さんが初めて息子に話しかけたのです。今までは差し障りのない話だけで、「今後、どうするんだ?」というような深刻な話は一切避けてきました。しかし、今回、妻とともにカウンセリングにやってきたことで、一郎さんも思い切って息子に話しかけてみようと決心しました。

息子からどんな反応があるだろうか、黙ってしまい、また引っ込んでしまうのではと心配していたのですが、父親の質問に案外素直に答えてくれました。そして、カウンセリングに行くことも同意してくれました。

息子くんは、カウンセリングの場で、想像以上に自分の胸の内を語ります。
中学までは成績も上位だったが、進学した進学高は頭の良い人ばかりで、自分はついていけない、自分の居場所がないと思い込むようになったこと。
高校は退学して、自分で高認(高校認定試験)を受けて、将来は大学に行きたい。
ということを、初めて親に語りました。
両親は、今まで全くわからなかった息子の気持ちがわかり、想像以上にしっかり自分の将来を考えているので、安心しました。

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4回目の面談では、息子くんが学校に行き始めたことが報告されました。
その前の週まで、本人は今の高校をやめて高認試験をとるつもりだったのに、父親と話し、カウンセリングに来てから、気持ちが180度、変わったようです。

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以上のように、息子くんは、あっという間にひきこもりから回復しました。
そのきっかけとなったのは、
・初めて、「これからどうするのか?」という微妙な話題を、父親と落ち着いて話し合えたこと。
・初めて、本人がカウンセリングに来れたこと。
などが挙げられます。

しかし、そのきっかけを作ったのは、母親である花子さんの心の大掃除でした。
花子さんは、今まで、夫の浮気の辛さを誰にも語ることができず、心の中で棚上げしていました。
カウンセリングの場で、その気持ちを、初めて第三者に語ることができました。
胸につかえていた気持ちが軽くなり、初めて夫婦で心の底から向き合うことができました。
しかし、10年前の不倫と離婚騒動について、夫婦で話し合ったわけではありません。そのことはカウンセラーに語っただけです。
しかし、そのことが家族関係の風通しを良くして、両親が今までできなかったことをできるようになりました。
それまでは怖くて切り出せなかった話題、つまり息子の将来という話題を、家族の間で避けずに話し合えました。
その結果、息子のひきこもり問題が一気に解決したのです。
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