2021年01月20日
私は公明党員ではないのですが、公明新聞から連載を頼まれまして、毎週、3月まで連載することになりました。
新聞に掲載された後、順次こちらでも紹介していきます。
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ひきこもり:求められる支援(1)
公明新聞2020.12.17
社会問題化
長期化・高齢化、国内に150万人
次郎さん(仮名)は32歳。中学1年生までは優等生でしたが、中2でいじめを経験し、学校に行けなくなりました。高校を卒業した後は進学も就職もできず、家にひきこもり、10年が過ぎてしまいました。昼夜が逆転し、インターネットでゲームをするだけの生活です。外出は夜間のコンビニだけで、友達はおろか、社会との接点が全くありません。親はどう息子に接したら良いものか分からず、何も言えずにいます。これはひきこもりの典型的な例です。ひきこもりの本当の原因は分かっていません。しかし、心の根底にあるのは、家族や友人、社会の人など、他者との人間関係を築く不安です。発達障がいや、うつ病などの精神疾患が隠されている場合もありますが、そのように誤診されるケースもあります。
私が精神科医になった35年前、社会的ひきこもりは十代や二十代の問題でした。今では、ひきこもりの長期化・高齢化が大きな社会問題となっています。
国内のひきこもり者の数は100万とも言われますが、その正確な数は分かりません。家族の恥と考え、隠すからです。社会の支援を拒み、80代の高齢者の支援に入ったケアマネジャーが長期間ひきこもっている50代の子を発見したりします。これが「8050問題」です。
世間からは怠けや甘えと見られがちですが、当人たちはとても苦悩します。孤立し、誰にも救いを求められず、生活の糧と生きる目的を失い、自死するケースも少なくありません。
家族にとっても長く苦しい日々です。家族原因説のために親は自分を責め、自信を喪失し、何も言えずに腫れ物に触るようです。
ひきこもりは当事者と家族ばかりでなく、教育・医療・心理・福祉などの支援者たち、地域の人々、そして行政など社会全体が取り組む大きな課題です。
本連載ではひきこもりをどう理解したら良いのか、本人や家族ができること、支援者たちがどう手を差し伸べたら良いのかをご紹介します。