子どもと家族の研修会→当事者向け
グループ・スーパーヴィジョン→支援者向け
と区別していました。
しかし、今回その垣根を低くしてみようと思い立ちました。
研修会には支援者もOKです。
グループSVも支援者ではない当事者に開放します。
当事者とは、家族や自分自身に解決すべき「問題」を抱えている人。つまり患者さん(クライエント)です。
支援者とは、自分自身のことではなく、他者のために支援しようとする人です。たとえば、守秘義務を遵守できる専門職(医師、看護師、臨床心理士、社会福祉士、精神保健福祉士、養護教諭・教師、相談員など)
ということです。
「この両者は支援する側・される側という別のカテゴリーだから研修なども分けるべし!」
というのが、一般的な、無難な、というか当然の考え方です。
でも、私はその常識に挑戦したいと考えています。
なぜなら、
当事者性と支援者性は循環しているから。
というのは、私がいつもお話ししていることなのですが。
人は自分自身の人生を生きているから、他者の人生もわかるし支援できます。
しかし、みなさん
「私は問題を抱えた患者です。」
「私は患者さんを支援するプロです。」
という二分法のラベルを持ちます。ラベルがなければわかんなくなってしまいますから、まあラベルは必要なんですけど。
でも、支援者は自身の当事者性を、当事者は自身の支援者性を忘れてはいけないんです。つい、忘れてしまうのですが。
忘れてしまうと、うまくいきません。
支援者が忘れてしまうと、忘れている自分自身の当事者性を支援対象(患者さん)に投影してしまいます。しかも、そのことに気づけません。
当事者が忘れてしまうと病気が治りません。当事者は自分の支援者性に気づくことによって回復していきます。
ですから、張り付けられたラベルの色が異なるだけで、もとをただせば人はみな同じなんですよ。
支援者(医者とか)・当事者(患者とか)は、その人に与えられたラベル(色分け)ですが、支援者性・当事者性は、異なった概念です。
当事者性とは、自分の人生を必死に生きている主体です。主観性の世界、感性の世界であり、余裕なんかない、頑張って必死に生きています。平穏で楽しさに満たされている時は幸せだし、逆に大変な時は辛くて、困って、身動きができない状態に陥ることもあります。良くも悪くも、とっぷりその気持ちの中に浸っている状態です。まあそれがあるから幸せも不幸も感じることができるのですが。
支援者性とは、そういう自分(あるいは他者)をどこか冷めて眺めています。客観性の世界、理性の世界です。感性に流される自分という主体(あるいは他者)の気持ちを受け止めながらも、今、どういう状態で、どんな気持ちでいるかを頭で理解していて、じゃあどうしたらよいのか、解決策を理屈で考えることができます。
これは、Bowenの言う自己分化(Self>
支援者性だけでは人生おもしろくありません。当事者性があるからこそ人生の楽しみや苦しみを「感じる」ことができます。しかし、当事者性だけで支援者性が機能していないと、気持ちのコントロールが効かなくなってしまいます。「幸せの当事者性」に浸っているときはコントロールしなくても構わないのですが、「苦しみの当事者性」に浸っているときは、そこから抜け出すために自分自身の、あるいは他者の支援者性が必要になります。
隠された支援者性を磨き、自分自身や他者(クライエントや自分の家族など)の当事者性をうまくコントロールしてあげる。
当事者さん対象の研修会も、
支援者さん対象のスーパーヴィジョンも、
やってることを突き詰めれば、上記の言葉に還元されます。
では、何が違うかというと、難易度が違うんですね。
参加者の言葉をご紹介します。
私は当事者の立場でしたので、今回初めてグループ・スーパービジョンに参加させて頂きました。支援者の方がどんなことをされているのか、とても興味深く楽しみでわくわくした気持ちで臨みましたが、終わる頃には全く反対の感情が出てきました。
「グループ・スーパービジョンって、なんて厳しいのだ!これは自分と向き合うことだわ!しかも事例を出すことは皆さんの前で自分と向き合うこと!うわ~怖いな。。。あっ、だから事例を決めるジャンケンのとき、私はなんとなく5と4は避けてしまったのかな、、、グループ・スーパービジョン、さすが支援者向けだわ。」
これが私の率直な感想です。
スキー場で例えれば、緑の初心者コースか、赤の中級者コースかという違いなんです。
当事者さん対象の研修会は緑のコース
支援者さん対象のスーパーヴィジョンは赤のコースです。
スキー道具や滑り方自体は何も変わらないのですが、斜面の角度が違います。
斜面とは、自分の(相手の)見たくないものです。そこに滑り込んでいきます。
自分の人生の、見たくないものを見てしまうと、とんでもない感情が押し寄せて圧倒されてしまいます。
やっぱり私はダメな人間なんだ。
生きてる価値なんかないんだ。
自尊心が底をつき、落ちてしまいます。
緑のコースでは優しく滑ります。
スピードはゆっくりだし、怖ければ滑らなくても、迂回しても構いません。
赤のコースでは斜度がもう少し急になります。怖くなります。
でも、怖いから嫌だとか言ってられません。仕事で人さまを支援するためには、どうしても滑り降りなければなりません。怖さを乗り越えなんとか経験できれば、怖さが軽減します。その斜面はもう怖いものではなくなり、ほかの人が滑る支援もできるようになります。
黒の上級者コースも用意してます。
合宿スーパーヴィジョンです。
何しろ2泊3日の集中コースですから逃げられません。
合宿に参加してスキルアップしたい(と理屈ではわかる)のだけど、怖くて参加できない人が結構います。
参加してしまえば、何とかなるものなんですけど、参加するまではビビりますよねぇ。
逆に、いったん参加したらやみ付きになり、毎年参加しているリピーターさんもいます(笑)。
参加者さんの言葉の続きです。
やることは厳しいけれども、古民家と田村先生が醸し出す雰囲気に、又この日は皆さんとお茶タイムがあったりしてなんともあったかいひとときを過ごさせて頂きました。この場にいることがとても嬉しくなりました。
参加者の方が「今まで言えなかったことを言ってよい場、言える場」とおっしゃっていたことがとても印象的でした。
どのコースでも、支えてくれるガイドさんの存在が大切です。
勇気を出して、自分の見たくないものに踏み込み、自尊心の底に落ちてしまっても、
「それでもイイんじゃない!!」
と無条件の承認を与えてくれる人がいれば、安心して滑り降りることができます。
、、、赤塚不二夫の「これでいいのだ!」は名言ですね!
急坂でもうまく滑り降りる人もいれば、
コケてひっくり返って、グルグル斜面を転がる人もいます。
でも、しょせんスキー場は危険を排除された安全な場所なんです。
コロコロ雪まみれで息苦しくなり、何が何だかわからなくなっても、骨折などの致命傷を負うことはありません。
初めて参加される方は、どのコースを選べばよいのでしょうか?
そう迷ったら、緑のコースからどうぞ。
それを難なくこなし、物足りなくなったら、徐々に難易度を上げていってください。
自信があればいきなり赤の中級コースや黒の上級コースから始めても結構です。
その結果、やみつきになるか、散々な目にあってスキーは二度とやらないことになるかは、あなたの自己責任です。
、、、と書いてはダメですよと、ベテラン参加者に指摘されました。
訂正します。
スキーが大好きになるか、大嫌いになるかはあなたの判断ですが、ベテランのスキーガイドはあなたが新たに挑戦したスキーを安全に楽しめるよう、責任を持ってガイドします。
蛇足)私は幼い頃から今でもスキーをやっています。ゲレンデで滑るときはガイドは不要ですが、危険なバックカントリー・スキーに出かけるときは必ず山を熟知した地元のガイドさんと同行します。