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オンライン心理相談の可能性と限界

2020年05月02日
別項で説明したテレビ会議システムのコミュニケーション特性と、
私のこれまでの経験を踏まえ、
Zoomを利用した心理相談活動の可能性と限界について説明します。

安全な枠組みの確保
わざわざ病院や相談室に出向かなくても、家からでもどこからでも利用できるのはとても便利です。
しかし、気軽だからといって、安全になんでも話せる場所(枠組み)はしっかり確保しなくてはなりません。子どもがちょろちょろ動き回ったり、隣の部屋で家族が聞いていないかしら、、、まわりの雑音が気になったり、電話や来客で中断されたり。まあ、そうなることも想定した上で枠組みを作れば良いのですが、大切なことは、安心して気持ちを語り、感情を表出できる場所を確保することです。

視線が合わない
細かいことかもしれませんが、Zoomだと微妙に目が合わないんですよね。
画面の真ん中にある相手の顔を見て話していても、画面とカメラの位置がわずかに異なるため(カメラはたいていPCやスマホ・タブレットの真上にありますよね)、相手が見ると、わずかな角度でそっぽを向いているように見えます。
恋人同士はじっと目を見つめあって愛情を伝え、相手との距離を縮めます。
まあ、カウンセリングではそのような目チカラをずっと使ってるのも疲れるし(距離が近すぎる?)、目線を合わせたり反らせたりします。
だから、相談室でお互いが向き合う角度は真正面ではなく120°だか90°だかが良いとか言ったりしますが。
そういう意味では、視線が微妙にずれるのは、それほど相談活動の障害にはならないのかもしれません。

グループ・スーパーヴィジョン
私がよく行うグループSVでは、スーパーヴァイザー(私)とスーパーヴァイジー(参加者)との相互のやり取りばかりではなく、ヴァイジー同士のやり取りも大切にしています。
参加者は2-3人程度から12-13人程度くらいが普通ですが、それくらいの人数なら2x2から4x4くらいのモザイク画面で対応できるのでなんとかなります。
あ、これはPCの場合ですね。Zoomには画面のモードの切り替えがあり、喋ってる人(音声を出している人)のひとり画面になるモードもあります。スマホのような狭い画面だとそうなりますかね。
グループをコーディネートするヴァイザーとしては、グループ全体に目を行き届かさなければなりません。モザイク画面でなんとか工夫してます。
実際のSVのプロセスは、

参加者一人一人のチェックイン事例提供者がモノローグ的に語るヴァイザーとヴァイジー(事例提供者)の対話(ダイアローグ)事例提供者と他の参加者とのやり取り全体のまとめとチェックアウト
という具合に進みます。
問題は、「事例提供者と他の参加者とのやり取り」の部分ですね。
二人の対話まではスムーズに行きますが、多人数を巻き込んだ多方向の会話をどう実現できるか。
まあ、実際には、他の参加者が事例についての感想や自分の体験などをモノローグ的に語る、いわば複数のモノローグの重なり合い(それをダイアローグというのかもしれませんが)になるので、なんとかなるでしょう。3人以上の人が重なり合って話出して発言者があちこちに飛ぶという状況はそれほど多くはありません。
実際には、そういうプロセスが出現すると、SVも面白くなり、グループSVの醍醐味なのですが。

家族療法
グループSV以上に、家族メンバー同士の対話が重要になります。
家族療法の進め方の話になりますが、初心者セラピストは家族のひとり vs. セラピストの対話が多くなりますが、経験を積んでいくと、家族同士の対話をうまくファシリテートできるようになります。
それZoomでどう生み出すかの工夫が必要になります。
二人(窮屈ですが3人も?)までなら一つの画面に入りますが、3-4人以上だと難しくなります。全体を入れようとするとカメラの距離が遠くなり、一人ひとりの表情が見えにくくなります。私の経験では、3人の家族セッションで二つのデバイス(PCとスマホ)を使い二つの画面にして、そのうちの一つの音声を切る(そうしないとハウリングが起きてしまう)対応をしました。
まだやったことありませんけど、多元中継の家族療法も可能になります。
モザイク画面を使って、単身赴任で別の場所にいるお父さんと、
ひきこもって自室にいる子どもと、
別の場所からの合同面接も可能です。
俺はひきこもっているから、姿は見せたくない!
と、音声だけで、自分のカメラをオフにして、相手の姿は見えるけど、自分の姿を晒さないということもできます(まだやった経験はありませんけど)。

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では次に、オンライン学会について。