SkypeやZoomのことを「ウェブ会議システム」と言うのだそうです。
今回の非常事態宣言。
STAY HOME戦略により、テレワークやウェブ会議システムが一気に注目を浴びるようになりました。
私は、以前はSkypeを、今はZoomを使って細々と仕事でも使っていましたが、今、多くの人が使い始め、一気に広がりました。
具体的にはオンライン・カウンセリングやオンライン学会についてのニーズが高まったので、私の経験と考えていることを書きます。
「ウェブ会議システム」と言っても、私が使ってるのは上記の二種類だけです。他にも色々あるようですが、ここでは主にZoomを念頭に置いてお話しします。他のシステムも似たり寄ったりでしょうし、今後、システムの使い勝手やできることは日進月歩でどんどん進化していくでしょうから、とりあえずZoomを例に現状で言えることを書きます。
メディア相談の歴史
直接の対面(face to face)ではなく、コミュニケーションの媒介となるものをひっくるめて「メディア」と言います。
マスメディアは新聞とかラジオとかテレビとか。
パーソナルメディアとしては、手紙、電話、ファックス、電子メール、SNS(ツイッター、LINE, Facebokとか)、そしてZoom、、、。
手紙や電話は昔からあったけど、インターネットの出現により、メディアの進化はここ20年ほどで加速されました。技術の進化に、人間の進化がついていけませんね。新しい技術を使いこなすのが大変です。
私は、メディアを使った相談活動を色々やってきました。
1971年に日本で「いのちの電話」がスタートした時は、「電話」で心理相談なんかできるものかと世の中は猜疑的でしたが、その後、電話による相談という概念が生まれました。私もいのちの電話には深く関わってきて、1997年(だったかな)から、電子メール相談を立ち上げました。
電子メールによる心理相談もその頃から試験的に取り組み、本も二冊書きました。
メディア相談も、それなりには使いこなすこともできるし、効果もあります。
(この辺りのウンチクもたくさんあるのですが、また別の機会に)
その後、現在に至るまで、私の心理臨床には積極的には取り入れていません。
やはりリアル(対面相談)とバーチャル(メディア相談)の差は大きく、やっぱりリアルの方が良いよねということで、オーソドックスな対面相談に戻っていました。
これまでのメディアと比較すると、Zoomは飛躍的に「リアル」に近づきました。中国や韓国では、日本以上にZoomの利用が進んでいて、私も2年前ほどから、中国の人々とカウンセリングやスーパーヴィジョンに利用してきました(通訳を介して)。その点、日本人はconservativeというか、あまり積極的ではありませんでしたが、コロナ禍のSTAY HOME作戦により、Zoomなどが一気に市民権を得て、多くの人々が恐る恐る使い始めました。私としては、従来からメディア相談には興味を持ち、新しい試みを色々進めてきましたし、私自身が都会から田舎に移住するので、オンラインで活動ができれば便利です。
と、前置きが長くなりましたが、本題の、Zoomのコミュニケーション特性について書きます。
従来のメディアとの比較
相手との繋がり方が、従来のメディアでは限られていました。
手紙や電子メールは文字情報のみ。
電話は音声のみで視覚情報はなし。
それにも関わらず、なんとか工夫して相談活動に利用してきました。
その点、Zoomは一気にリアルに近づきました。
使うまでは猜疑的な人がいるんですけど、実際にある程度使って、慣れたら、普通に対面で話しているのと遜色ないですよ。画像の解像度も音声も向上してきて、よく聞こえるし、表情などもよく見えます。だから、一対一で向き合う分にはほとんど問題ありません。でも、あえてリアルの対面と比較したZoomの限界をいくつか挙げます。
1)立体感がない(平面になってしまう)
遠近感がなくなります。
例えば、カメラの前でお辞儀するとカメラとの距離が近くなって、顔がグッとでかくなったりするんですね。
現実は三次元の世界ですがZoomだと二次元になります。
それが相手との距離感やリアル感に微妙に影響してくると思います。それは具体的にどういうことなのか、まだ私もまだうまく言語化できません。
2)目玉や首を振ることができない(広角の視野の欠如)
一対一で話し合っているときはほとんど問題ないことですが、複数の人と話そうとするときに問題になります。
人間の目はよくできているんですよ。ミクロ(ズームイン)とマクロ(ズームアウト)の両方の機能があります。網膜の中心窩付近の感度はよく、細かい字や表情までよく見え、その一方で辺縁の情報も、ほぼ180°くらい俯瞰することができます。感度やよくなく、ぼんやりとしか見えませんが、眼球や首を降ってそっちに中心を持ってくれば、すぐに詳しく見えます。こんなレンズやカメラはありません。
テレビのニュースのアナウンサーは正面を見ながら、下の方の机に置いてある原稿を読めるよう訓練するんですよね。あれもすごいですよ。
テレビのバラエティー番組など、たくさんのゲストがワイワイ喋り合ってる状況を放送するために、テレビカメラを何台も使って、会話に応じて切り替えます。でも、現場にいるディレクターやスタッフたちは、一つの(二つの)目だけで、複数のカメラの機能をやってのけます。
つまり、何を言いたいかというと、Zoomで3人以上複数の人たちと話し合う時に、リアルの世界との差ができます。つまりZoomで大人数の人たちと話し合う時、ひとり(二人くらいでもイイんですけど)ずつが大写しになった画面をタテヨコに分割して、モザイク状に写します。すると、個別の人との対話はできるのですが、全体を俯瞰できない。全体の場がどうなっているのか、場の雰囲気、グループのダイナミクスを観察できません。
一回、10人くらいが一つの部屋に集まってる全体像を広角レンズを使ってZoomやったのですが、すると一人ひとりが小さくなって表情が見えなくなります。やはりモザイク画面にしないとうまく会話できないんですよ。
3)複数の人たちとのワイワイガヤガヤがやりにくい
一対一にフォーカスした対話なら問題ないのですが、上記の特性のため、複数の人たちのグループの会議やおしゃべりはやりにくように思います。
複数の人たちが集まって交流する時、人間の目と脳は、テレビ収録の複数のカメラと同様に、首を振り、目をキョロキョロさせて、多人数の情報を一気に処理して、全体の空気を読み、誰の発言が重要で、誰の発言はノイズで、どこに注目して、その一方で他の人にも気を使い、全体をマクロに把握し、中心となる情報もミクロに把握します。
考えてみれば、これってすごいですよね。
余談になりますが、人間の感覚的にもこれは難しいです。
発達障害の人たちは、脳の認知機能的に、
ひきこもりや不登校の人たちは、対人関係の心理発達的に、
このような処理がうまくできません。
ここまでうまくできたテレビ会議システムはまだ無理ですね。将来は、こういうのもできるようになるんでしょうか??
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とりあえずこれくらいでしょうか。
そのことが、
相談活動(カウンセリング)と
会議・ミーティングのやり方にどう影響するのか。項を改めて説明します。