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スクール・ソーシャルワーク

2019年11月13日
先日、子どもの問題に関する地域の見守りネットワーク会議に参加してきました。

その経緯は次のとおりです(プライバシー保護のため、主旨を損なわない範囲で内容を変えています)。

社会の中で、スクール・ソーシャルワーカー(SSW)の役割はあまり知られていません。
学校で、教師は教育の立場から、
スクールカウンセラー(SC)は心理の観点から、
そして、SSWは社会福祉の立場から子どもを見守ります。
教師は常勤で、一つの学校に毎日勤務しますが、SCとSSWは非常勤で、地域の複数の学校を飛び回っています。

あるSSWの方から紹介されて、私のところにお母さんが二人の息子について相談にやってきました。お母さん一人の力では、精神科医に相談することは敷居が高くてできなかったでしょう。息子たちは様々な問題を抱えていました。学校に行かず、家出をしたり、家で暴力を振るったり、リストカットしたり、病院でもらった薬をたくさん飲んでしまったり。
お母さんはどうして良いのかさっぱりわからずお手上げ状態です。
しかも、夫婦仲はうまくいっておらず、お父さんは子どもに関心がなく、家でキレて怒鳴り散らします。家族は皆、お父さんから引いてしまっています。
学校の先生方もどうしたものか困っています。たまに登校した時にはごく普通に振る舞っているのに、なぜ学校に来ないのかよくわかりません。教師としては学校に来ることを一番に考えますが、実はその背後に様々な問題を抱えています。
お母さんは何度か私の病院に相談に来ましたが、そのうち来なくなってしまいました。
しばらくして、お兄さんの学校(高校)の担任の先生から連絡があり、先生も心配されていて、お母さんを誘い、教師とお母さんが一緒に相談に来ました。
お話を聞くと、自殺の危険が心配です。家庭の居心地が悪く、学校も居場所ではなく、生きていても仕方がない、死にたいと口走り、家出をして薬を大量に服用し、救急病院に担ぎ込まれました。今回は二日ほどで退院できましたが、今後同じことを繰り返すことが危惧されます。

私とSSWさんが相談し、子どもたちを取り巻くネットワーク会議を開催することになりました。地域の資源をよく知っているSSWさんが手はずを整えてくれました。
参加したのは、
お父さん、お母さん。
兄の高校の担任教諭、養護教諭、管理職。
弟の中学の担任教諭、養護教諭、管理職。
児童相談所の福祉士。
精神科医(私)。

みなさんお忙しい中よく集まれたと思います。
特に、子どもに関心がない(とお母さんが言っていた)お父さんも仕事を休んで参加できたのが良かったです。
90分ほどかけて、それぞれの立場から二人の子どもたちの様子が伝えられ、情報を共有しました。子どもたちは、学校で見せる顔と、家庭での顔が全く異なります。学校では元気に振る舞い、強い部分をアピールします。家庭では親に甘え。依存したい未熟な弱い部分をアピールします。
そのような二面性を持つ子どもをどう理解したら良いか。今後、どのようなことが危惧されるか。今、家庭で、学校で、地域でできることはどんなことかについて具体的に話し合いました。地域で子どもたちを見守る枠組みができました。

SSWは子どもを取り巻く家族、学校、心理、福祉、医療分野の人たちを繋ぐ役割を果たします。このSSWさんはとてもフットワークが軽く、みなさんを繋げることができました。
しかし、SSWは新しい職種で、あまり社会に認知されていません。
SSWさんから音頭を取っても、これだけ他職種の人たちが集まれないそうです。
お医者さんからの発案だと集まれるそうです(それもヘンな話ですが)。
今回は、SSWさんと私がうまく連携して地域の資源を賦活できたと思います。