私の学会仲間で、日本の家族療法の一人者、東(ひがし)豊さんが書いた本(マンガ)をご紹介します。
マンガでわかる家族療法 親子のカウンセリング編私のオフィスの待合室にも置いてありますので、お時間があったらお読みください。
マンガなので読みやすく、家族療法の実際の様子やそのやり方が、分かりやすく描かれています。その冒頭の章は「不登校」の家族で、子どもとその両親との面接が描かれています。私の臨床体験とすごく共通しているので、私なりの目線で解説を加えたいと思います。
家族療法はマジックの治療法、とよく言われます。
今まで長い間学校に行かず、ひきこもっていた人が、信じられないように再び学校に行き始めます。
その訳は、他の流派(〇〇療法)では考えられない、ユニークでダイナミックなやり方をするからです。その様子を本の事例をもとに紹介しましょう。
このご両親は、スクールカウンセラーとお医者さんから、
「無理強いしてはいけません。本人の自主性を大切にしてそっと見守りましょう」と言われたことを3年間守り続けました。これはとても大切な原則です。
特にひきこもり始めた初期は、学校に行きなさいと無理強いは禁物です。
なぜなら、親がマイナスの影響を与えてしまうからです。
それが功を奏して、2-3週間で学校に復帰する場合もよく見られます。
普通の(家族療法以外の)カウンセラーができるのはここまでです。
家族療法では、さらにもう一歩深めます。
ひきこもっている期間が1-2ヶ月を過ぎたら、親が積極的にプラスの影響を与えます。しかし、それは結構難しいものです。このマンガでは、その様子が見事に描かれています。
「母親と父親が協力して下さい。」これも、とても大切です。
しかし、一般のカウンセラーは、どのようにしたら協力できるかまでは、具体的に教えてくれません。ここが、夫婦関係を専門に扱う家族療法の得意分野です。
実は、相談に来られるほとんどのご両親は、すでに十分協力しています。
少なくとも子どものために協力しようと、一生懸命努力しています。
しかし、それがうまくいかず、母親と父親の力が相殺してしまい、結果的に、子どもには何も伝わっていません。
両親は協力して、熱心に相談にやってくるのですが、残念ながら、夫婦の間に見えないシコリがあり、夫婦の力を削いでしまいます。
家族療法では、隠れたシコリを見つけ出し、うまく解除します。
すると、父親も母親も、のびのび自分らしく家族に関わることができるようになり、結果的に、子どもは元気を回復します。
マンガに描かれた両親は、苦悩する子どもに大きなプラスの力を与えています。専門用語でエンパワーメントと言います。
しかし、家族心理を十分理解していない通常のカウンセラーや、当事者たちにとって、それが「プラスの力」であるとは思いもよりません。むしろ、マイナスになるから、そんなことはしてはいけませんと言うでしょう。
ここがとてもダイナミックな視点です。
子どもに問題が起きると、家族は自信を失くし、持っているはずのパワーを隠してしまいます。
家族療法は、子どもの力を信じ、両親の力を信じて、家族の潜在的なパワーを復活させます。その結果、子どもの問題が見事に解決します。
これ以上本の内容を書くと、ネタバレになりますので、あとはどうぞ本を手に取ってお読みください。