1) 一郎さんは、息子の太郎くんと話をしたいと思っています。
「なぜ、止まっているんだ?」
「今のままではいけない。前に進んでごらん?」
しかし、どうしても言えません。
はじめて太郎が学校を休んだ時、無理に引っ張って学校に行かせました。失敗しました。
2回目に行かなくなった時、太郎に話しかけたら拒否されて、自分の部屋に行ってしまいました。
今回も、太郎に話しかけたら、また拒否されるのではないだろうか。
そう思うと、とても怖くて言えません。
心がフリーズしてしまいます。
2) 二郎課長は、部下の太郎に言わなくてはなりません。
「そのやり方ではよくない。こうやりなさい。」
しかし、どうしても言えません。
以前、太郎に指示したら、「はい」と返事だけは良いのですが、無視して直そうとしません。
太郎を叱りました。
頭にきていたので、きつく叱りすぎてしまいました。
以来、太郎は私のことを嫌っているようです。
また太郎に伝えたら、また無視されるのではないだろうか。
そう思うと、とても怖くて言えません。
3) 春ちゃんは、親友の夏ちゃんと一緒にお昼のお弁当を食べようとしたら、夏ちゃんは別の子と一緒に食べ始めました。
春ちゃんは、夏ちゃんに無視されました。
夏ちゃんは私のことを嫌いになったんだ。
もう夏ちゃんにはお弁当いっしょに食べようと、怖くて言えません。
学校なんか行きたくありません。
自分にとって大切な人にNoと言われるんじゃないだろうか?拒否されるのではないだろうか?そう思うと、何も言えなくなってしまいます。
メッセージを伝えることがとても怖くなります。
拒否された経験が、相手と関係性する自信を失います。
また拒否されることが怖くて、相手に向き合えなくなります。
言いたいことを言えなくなります。
その結果、コミュニケーションが途絶えてしまいます。
言うべきことを言えていないことは、相手も十分にわかっているものです。
「ああ、怖がって言えないんだな。」
何も伝えられないという事実が、自分の不安な気持ちを相手に伝えてしまうことになります。そして、相手も不安にさせてしまいます。
あるいは、不安が高じて突っ込みすぎてしまいます。怒りや攻撃性となり、相手を傷つけます。
それも、怒りの根底にある不安感を相手に伝えていることになります。
4) 20代の四郎さんは、親友の毅さんに思い切って相談しました。
もう一度、花子さんをデートに誘いたいんだけど、どうしよう、怖くて言えないんだ、、
多分、花子さんも僕のことを気に入ってくれているのは、普段のそぶりでわかる。
でも、怖いんだ。
一回目のデートはうまくいったんだけど、二回目誘ったら、その週末は用事があるからと断られてしまった。
一回目のデートで僕に幻滅したんじゃないだろうか?
そう思うと、どうしても言えないんだ。
いっそ、花子さんのことを諦めようかとも思ったけど、それもできない。
僕の中で、花子さんへの愛着は切れないんだ。
親友の毅さんは、四郎さんに言いました。
怖さを乗り越え、自信を持って、相手に伝えてごらん!
花子さんは、「ちょっと待って。今はダメ。」
というかもしれない。
他の用事があるからか。
あるいは、まだ気持ちの準備ができていないのかもしれないよ。
新しい世界に飛び込むのは不安でしょう。迷っているのかもしれない。
安心を与えてあげなさい。
四郎が、本当に花子さんのことを思っているのなら、その気持ちを伝えてごらん。
真意は伝わるものです、、、そのことを信じましょう。
しかし、同時に関係性を切る選択肢もあります。
もし花子さんのNOが明確なのであれば、彼女を諦める勇気が必要です。
自分のYESと、相手のNOと、両者を尊重します。
相手のNOを無視して自分のYESを強要すると、ストーカーになります。
相手にダメージを与えてはいけません。傷つけてはいけない。
3)春ちゃん、親密な相手に拒否られることは、とても怖いですね。
もうそんな体験したくないでしょう。
学校に行かなければ、さらに傷つくことから自分を守ることが出来ます。
でも、夏ちゃんはホントに春ちゃんのことを嫌いになったのかな?
学校に行かないと、それを確かめるチャンスも失ってしまうよ。
2)二郎課長は、配置転換がない限り、部下との関係性を継続しなければなりません。
恐怖を惹起する関係性を無理して継続すると、病気になってしまいます。
その恐怖心をどうにか小さくしなければなりません。
思い切って、部下の太郎と直によく話し合ってみてはどうでしょう。
あるいは、部長に相談してみては。
どうにか恐怖心を減らす工夫が必要です。
1)一郎さんは、息子に言わなくてはなりません。
太郎くんは、人と関わることを怖がっています。
お父さんも、息子と関わることを怖がっています。
一郎さんは、そうやって「人と関わる=怖さ」を息子に伝えています。
父親は、人と関わる安心と喜びを息子に与えて下さい。
そのためには、まず、一郎さん自身がそれを経験しなくてはなりません。
フリーズしている状態では、いくら「そうしなければならない」と理屈でわかっても、できません。
太郎君との交流を再開するために、まずお父さんのフリーズを解凍します。
その方法はふたつあります。
A)フリーズの由来を突き止めます。
息子に無理に働きかけて失敗した体験があります。
しかし、それだけではないでしょう。
息子との関係性以外の、過去の親密な関係性がフリーズしている場合がよくあります。それを突き止めます。
それを意識の俎上に挙げることで、昔のフリーズと、今のフリーズを分離します。昔のフリーズが、今のフリーズに影響しなくなります。
それが十分できていないと、無意識下で、昔と今のフリーズが連結して、昔の怖さがそのまま息子に向かう怖さに投影してしまいます。
B)一郎さんの、今の心を温めましょう。
親密な関係性の中で、支えられる暖かさ、共感してくれる暖かさを得て下さい。
そのためには、大切な人(家族や友人)の協力が必要です。
特に、一郎さんの場合は、妻との関係性、ご自身の父親との関係性が大切です。そこを温めましょう。
太郎くんは、内心、前に進みたいと思っています。前に進まないといけないことはちゃんとわかっています。
でも、怖くて進めません。
進むか、進まないか、迷っています。
お父さんが働きかけたからと言って、すぐに「はい」とは言えないでしょう。
今、お父さんの勧めを聞き入れられず拒否しても、お父さんには諦めて欲しくない、また働きかけてきてほしいと心の底では願っています。
もう一度働きかけてくれたら、今度は「はい」と言おうかな、と思っているかもしれません。迷っている時はそういうものでしょう。
自信を持ってごらん。
気持ちは必ず通じるものです。
逆に言えば、それくらい努力しないと、望みは成就できないんだよ。
迷うのはわかる。
怖いのもわかる。
でも、そこを突っ込まないと、相手だって、突っ込めません。
心が恐怖に占領されている時は、何をやってもうまくいきません。
いくら努力しても、(a)突っ込みすぎるか、(b)突っ込めずに離れすぎてしまうかのどちらかになってしまいます。
まず、恐怖を取り除くことです。
心に余裕を持たせます。車のハンドルの「あそび」と同じです。
ショックを柔らかく吸収してくれる「遊び心」です。
楽観的な(希望的な)見通しも必要です。
もしかしたら、うまくいくかもしれない。。。
そんなプラスのイメージが少しでも生まれれば、心がリラックスできます。
現状を打破して、新しい世界に飛び込むためには、
「大丈夫だよ。そんなに心配しないでやってみよう。」
と言ってくれる人の存在が必要です。
確固として見守ってくれる他者が身近にいれば、思い切って勇気を出して、前に進むことができます。
お父さんは太郎くんをしっかり見守ってください。
私は、お父さんを見守ります。