夫婦間のシコリを解きほぐす
家族メンバーの間には、未だに解決されていない過去のシコリが残っているものです。お互いに距離を開けて関わらないようにしていれば、シコリを残しておいても仕方がないでしょう。しかし、家族の力をフルに発揮するには、お互いの距離を近づけます。その時は、過去のシコリを棚卸しして整理します。たとえば、次のようなシコリです。
夫婦間の暴力
夫婦間の暴力には、「手を挙げる」、殴る蹴るといった身体的な暴力が思いつきますが、それ以外にも様々な種類があります。
l 身体的暴力
一番代表的な暴力です。普段は仲が良くてもアルコールが入ったり、喧嘩になった時などに暴力が出現します。たとえその頻度(年に1回とか)や程度(骨折や外傷といった大きなレベルから、傷はつかない小さなレベルまで)に関わらず、暴力の存在は夫婦間に大きな溝を与え、被害者に大きな傷を与えます。
l 性的暴力
性的な関係が許される夫婦であっても、双方の同意のない無理なセックスは暴力となります。避妊が必要なのに、それを怠る場合も該当します。
l 言葉の暴力
相手が傷つく言葉を一方的に投げかけます。たとえ本人が意図せず何気なく発した一言であっても、それを受け取る側にはシコリとして長く残ることもあります。
l 経済的な暴力
生活に必要なお金を渡さないなど。
l 行動を束縛する暴力
普段の監視したり、行動を制限することにより、相手を束縛します。
足を踏んだ方は忘れても、踏まれた痛みは記憶に長く残ります。
浮気、暴力(DV)、アルコール、ギャンブルなどは男性が加害者で女性が被害者というパターンが今までは一般的でしたが、最近では逆のパターン、つまり女性が加害者で男性が被害者になるケースも少ないながらあります。
これらは身体の傷や生活上の不便以外に、心に大きな傷を残します。
特に深刻なのが自尊心の低下です。自分がやっていること、たとえば子育て、子どもへの関わり方、人との関わり方などについて、これでいいのだろうかと自信を持てず、自分はダメな人間だと悲観的になり、自分を責めるようになります。
これ以外にも、夫婦間には長い間に気づかないうちに傷ついて、それがトラウマとして後までのこることがあります。
子育てに関わってこなかったというトラウマ
母親が家事育児を担当して、父親が外で稼ぐという役割分担が人々の意識の中に根強く残っているために、父親が子育てに関わらないことがそれほど問題だとは意識されにくいものです。しかし、子育てに苦労している時に、一緒に関わってくれなかったというトラウマ(心の傷)は深く心に残ります。子どもが大きくなり思春期に達して父親の関わりが大切と言われても、今まで関わってこなかった人がうまく関われるわけがないと、夫のことを信用できません。
言葉を交わさないトラウマ
必要最小限の用事や、社会の出来事など理屈(理性)は話せても、お互いの気持ち(感性)を語り合えない夫婦がいます。気持ちが通じ合わないと、夫婦としての実感と安心感を持つことが出来ません。
セックスレスというトラウマ
人々は二つのコミュニケーション様式を用いて、親密さを成就します。ひとつが気持ちの触れ合い(言葉によるコミュニケーション)であり、もうひとつが身体の触れ合い(スキンシップ、そして夫婦間のセックス)です。言葉は理性を持った人間だけの特技ですが、スキンシップはまだ言葉を持たない赤ちゃんや、哺乳類動物でさえとても大切なコミュニケーションです。若い頃の生殖のためのセックスを終えた後、コミュニケーションのためのセックスを夫婦が行えないと、身体を通した安心を得ることができません。
親族から守ってくれなかった痛み
「嫁と姑」に代表される実家とのいざこざはどの家族にもあるものです。夫がしっかり仲介して、妻を守ってくれれば良いのですが、そのことから逃げていたり、実家側に付いたりすると、妻の痛みは大きなものです。妻がどれほど辛かったか、夫は未だに理解していません。
過去に起きた出来事は、たとえ現在は収まっていても傷の痛みは消えません。夫婦が深く気持ちを通じ合わせることが出来ません。
シコリを整理するためには、まず言葉に出してみることです。直接相手に伝えることが難しかったら、まず信頼できる人に打ち明けてみましょう。友だちや専門家など、家族ではない第三者が良いです。